バッグや靴の合皮が、ボロボロと剥がれて「捨てるしかないのかな」と諦めていませんか?
「補修スプレーを使えば直るかも!」と、商品を探している人も多いでしょう。
しかし、待ってください!
ボロボロになった合皮にいきなりスプレーを吹きかけるのはNGです。
スプレーは万能ではありません。
状態によっては、かえって傷口を目立たせてしまうことがあります。
合皮の剥がれにはスプレーよりも、もっと安くきれいに隠せる方法があります。
この記事ではスプレーの正しい使いどころと、初心者でも失敗せずに「遠目にはバレない」レベルまで修復するテクニックを解説します。
「修理不能」と判断すべき寿命のサインもお伝えしますので、お手持ちのアイテムが直せるかどうか、まずは確認してみてください。
Contents
合皮のボロボロに補修スプレーは使えるか?

「革 補修 スプレー」と検索すると、様々な商品がヒットします。
しかし、多くの人が「補修スプレー」の役割を誤解しています。
スプレーはあくまで「色を乗せる」ための道具であり、剥がれたり凹んだりした素材を平らに戻す効果はほとんどありません。
購入してから後悔しないために、まずはスプレーの得意・不得意を理解しましょう。
スプレーは色付け用!
「染めQ」のようなスプレー塗料は・革・布・プラスチックなど多様な素材に馴染み、質感を損なわずに染められます。
全体的な色褪せを復活させたり、バッグの色をカラーチェンジしたりする際に威力を発揮します。
ネット通販で購入できます。
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合皮の表面がボロボロと剥がれている状態に対し、スプレーだけで修復にチャレンジするのはおすすめできません。
いくつか理由があります。
- 凹凸は埋まらない:スプレーの粒子は細かいため、剥がれた部分の段差や凹みはそのまま残ります。
- ムラになりやすい:広範囲がボロボロの場合、均一にスプレーするのはとても難しい作業です。
劣化した部分は塗料を吸い込みやすく、正常な部分との色の差(色ムラ)が目立ってしまいます。 - 下地処理必須:きれいに仕上げるには、ボロボロの皮膜を剥がし、下地を平らにする必要があります。
スプレーはその後の「色付け」の役割です。
スプレーを吹きかけるだけでは直らないんですね。
合皮の「加水分解」とは?
そもそも、なぜ大切にしまっておいた合皮がボロボロになるのでしょうか。
「保管方法が悪かったの?」と自分を責める必要はありません。
合皮(特にPUレザーと呼ばれるポリウレタン樹脂製のもの)の劣化の多くは、「加水分解」という化学反応が原因です。
加水分解とは、素材であるポリウレタン樹脂が空気中の水分と結びつき、分解されてしまう現象です。
この反応が進むと、表面がひび割れたり、薄皮が剥がれたり、あるいはベタベタと溶け出したような状態になります。
実は、合皮は製造されたその瞬間から、劣化(加水分解)が始まっています。
一般的に、寿命は製造から約3年と言われています。
「久しぶりにクローゼットから出したらボロボロだった」という現象は、保管中にこの寿命を迎えてしまった典型的なケースです。
劣化中の補修は色ムラ・剥がれの原因に
加水分解が進行している合皮に補修を施すと、様々なトラブルが起きます。
まず、気になる点は「仕上がりのムラ」です。
表面が粉を吹いたように劣化していると、補修材が均一に定着しません。
乾燥後にダマになったり、色ムラができたりして、「直す前より汚らしく見えてしまう」という結果になりがちです。
特にペンタイプで広範囲を塗ると、塗り跡が残って傷が余計に目立つことがあります。
次に「剥がれ」のリスクです。
ボロボロと崩れているのは表面だけでなく、土台となる生地自体が弱っている可能性があります。
どんなに強力な塗料や接着剤を塗っても、土台ごと崩れ落ちてしまえば意味がありません。
根本的な劣化が進んでいる場合は、スプレーやクリームでの表面的な補修は、一時しのぎにしかならないことを知っておきましょう。
スプレーより確実!合皮のボロボロを「直す・隠す」3つの商品
合皮のダメージに合わせて「貼る」「塗る」「隠す」を使い分けることで、より安く、確実に見栄えを復活させることができます。
ここでは、わたしのような初心者でも、扱いやすい3つの商品を紹介します。
①広範囲の剥がれには補修シート・シール
ソファの座面やバッグの側面など、平らで広い範囲が剥がれてしまった場合には、「合皮用補修シート」や「補修シール」を選びましょう。
補修シートは、伸縮性があるものが多いので、体重のかかるソファ・バッグの広範囲の細かい傷・破れ・空いた穴を塞ぐのに向いています。
大きな魅力は手軽さと安さです。
ホームセンターやネット通販だけでなく、DAISO(ダイソー)やCan★Do(キャンドゥ)などの100円ショップでも購入可能です。
引用:DAISO
- ダイソー:「合皮用補修シート」(黒、こげ茶など)が110円で販売されています。
- キャンドゥ:「合皮補修シール」などが販売されています。
シールタイプなので、裏紙を剥がして貼るだけで作業が終わります。
仕上がりは「貼った感」がどうしても出ます。
特に角や曲面に使用すると、シールの端から剥がれやすくなります。
角を丸くカットすることで剥がれにくくする工夫が必要です。
また、100均の商品はサイズが小さめ(例:8cm × 14cm程度)です。
ソファの座面全体など広範囲を直したい場合は、ネット通販で販売されている大判サイズ(例:100cm幅のもの)を探すことをおすすめします。
擦り傷・ひっかき傷には補修クリーム
擦り傷やひっかき傷には、「補修クリーム」を選びましょう。
代表的な商品は「コロンブス アドカラー」です。
1本400円程度で手に入るため、とてもお手頃ですね。
本来は革靴の傷補修用ですが、合皮にも使用できます。
しかし、合皮の種類によっては密着しない可能性もあるため注意が必要です。
クリームを傷に塗ることで、表面の傷を目立たなくする効果が期待できます。
深い傷の場合は、同シリーズの「アドベース」という下地材を使うと、よりしっかりと補修できます。
絵の具のように色を混ぜて(調色して)自分のアイテムに近い色を作れるのがメリットです。
一度に厚塗りせず、水で少し薄めながら薄く重ね塗りをすると、自然な仕上がりになります。
「遠目には傷がわからなくなった」という声も多く、コストパフォーマンスがよく、取り入れやすい方法です。
微細な傷隠しの裏技!油性マジック
つま先やバッグの角が少し擦れて、下地の白い布が見えている程度の「浅い傷」なら、家にある油性マジックで対処できる場合があります。

パンプスやバッグの角など、目立ちにくい場所の小さな色剥げにいい方法です。
黒や茶色など色が合えば手軽に使えます。
カメラのグリップなど、アイテムの細かい傷隠しにはおすすめです。
これはあくまで「緊急の応急処置」です。
- テカリ:油性インク特有の光沢(テカリ)が出るため、マットな質感の合皮に塗ると、角度によっては塗った場所が目立ってしまいます。
- 色ムラ:広い範囲や平らな面に塗ると、塗り筋が見えて「安っぽい」見た目になる可能性があります。
- 色移り:衣服や肌が触れる部分に塗ると、色移りする可能性があります。
「今すぐ出かけるのに、傷が目立って恥ずかしい!」という時の手段として、ごく狭い範囲に使用するのがよいでしょう。
初心者向け!合皮の剥がれ補修手順

道具が揃ったら、補修作業です。
失敗しないポイントは、いきなり補修材を塗らないこと!
下準備をしっかりすることが、仕上がりを決めます。
ここでは補修クリームとシートを使用する場合を例に解説します。
さっそく始めていきましょう!
①下準備
まずは、ボロボロと剥がれかけている合皮の皮膜を取り除きます。
劣化した皮膜の除去:浮いている皮膜の上からクリームを塗っても、すぐに一緒に剥がれてしまいます。
ここで役立つのが「ガムテープ」です。
ボロボロの部分のみにガムテープを貼り付け、剥がしてください。
劣化した皮膜だけを簡単に除去できます。
②補修材を薄く重ねて塗る・貼る
下地が整ったら、補修材を使用します。
- クリームの場合:一度に厚く塗らず、薄く重ねるのがポイントです。
一度でカバーできない場合は、乾いてからクリームを塗る工程を繰り返します。
- シートの場合:気泡が入らないように、端から少しずつ押しつけながら貼ります。
角は丸くカットしておくと剥がれにくくなります。
③保護スプレーで仕上げる
補修材が完全に乾いたら、仕上げをしましょう。
ここで「スプレー」の出番です。
必要に応じて、補修した部分の色落ちの防止と、光沢を調整するため「保護スプレー」を使用します。
最後に全体に防水スプレーをかけることで、汚れや水分から守り、補修箇所の耐久性を高めます。
ボロボロの合皮を直すか捨てるか?セルフとプロの判断基準

「頑張って直したのに、すぐにまたボロボロになった…」なんて思いはしたくありませんよね。
セルフ補修で対応できる範囲と、プロに任せるか買い替えを検討すべきラインをはっきりさせておきましょう。
一見すると難しそうですが、簡単に判断できるポイントがあります!
セルフ補修向きは小さな傷・目立たない場所
下記の条件に当てはまる場合は、セルフ補修に挑戦する価値があります。
- つま先のちょっとしたスレ、バッグの内側、底面の角など。
- まだ劣化が部分的で、周囲の生地はしっかりしている。
- 「失敗しても近所への買い物用に使えればいい」「練習台として割り切れる」と思えるもの。
多少仕上がりが粗くても目立ちにくく、コストをかけずに補修できる可能性があります。
プロ依頼向きはハンドル・靴の屈曲部・ブランド品
以下のケースは、素人の手には負えないことが多いため、専門店への相談をおすすめします。
- ハンドル(持ち手)は:常に手で触れ、汗や皮脂が付着する場所です。
補修してもすぐにベタつきが再発したり、色が手に移ったりするリスクが高いです。 - 靴の甲(屈曲部):歩くたびに大きく曲がる部分は、塗ったクリームや貼ったシートがすぐに割れたり剥がれたりします。
プロの特殊塗料でないと対応が難しい箇所です。 - ブランド品:高価なバッグや靴をセルフで補修してしまうと、ブランドとしての価値が大きく下がります。
将来的に買取に出す可能性がゼロでないなら、正規店や専門の修理業者に依頼するのが望ましいでしょう。
寿命のサインは生地全体のベタつき・硬化
残念ながら、以下の状態が見られる場合は「寿命(末期症状)」です。
- 一部だけでなく、どこを触ってもペタペタする。
- 生地がカチカチに硬くなり、少し曲げただけでパリッと割れる。
これは加水分解が全体に進行している証拠です。
一箇所を直しても、すぐに別の場所が破れます。
「今までありがとう」と感謝して手放し、新しい相棒を迎えるタイミングです。
合皮の状態を見極めることも大切ですね。
合皮を長持ちさせる3つの劣化対策を紹介!
補修して蘇ったアイテムや、新品の合皮製品を、長くきれいな状態で使うための対策を紹介します。
どなたでも手軽にできる方法なので、無理なくできる範囲で取り入れてみてくださいね。
①使用後の「乾拭き」で水分除去
合皮の大敵である「加水分解」を引き起こすのは水分です。
雨の日はもちろんですが、普段の使用でも空気中の湿気や手汗が付着します。
使用後は、柔らかい布で「乾拭き」をしましょう。
たったこれだけの習慣で、合皮の寿命は大きく変わります。
雨に濡れてしまった場合は、タオルで優しく水分を拭き取り、風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させてください。
②湿度管理と「不織布カバー」での保管
保管する際は、通気性の良い「不織布(ふしょくふ)カバー」に入れましょう。
100均でも購入できます。
クローゼットやシューズボックスには除湿剤を置き、定期的に交換して湿度をコントロールすることも大切です。
③定期的な「防水スプレー」「保護クリーム」
月に1回程度、防水スプレーをかけておくと、水分や汚れを弾いてくれます。
最近では合皮専用の「劣化防止クリーム」や「プロテクションクリーム」も販売されています。
定期的に塗ることで、表面を保護し、加水分解の進行を遅らせることができます。
ご紹介したメンテナンスを実践して、大切なアイテムを長持ちさせましょう。
まとめ
- スプレーは色付けや仕上げ用。
ボロボロの補修には、クリームやシートが適している。 - 広範囲には「シート」、擦り傷・ひっかき傷には「補修クリーム」、微細な傷には「油性マジック」を使い分ける。
- 下準備をしてから補修することで、仕上がりの美しさと持ちが変わる。
合皮のボロボロ補修について、重要なポイントをおさらいしましょう。
プロのような仕上がりを目指す必要はありません。
「80点の出来栄え」でも、遠目には十分きれいに見え、問題なく使えます。
「もったいない」というあなたのその気持ちは、とても素敵です。
まずは数百円で買えるグッズを使って、補修にチャレンジしてみてください。
簡単な作業で、愛着のあるアイテムが蘇る喜びを感じられるでしょう。
















